金融庁から「老後生活では約2千万円の金融資産の取り崩しが必要になる」という報告書があってから資産運用への関心が高まっています。
“老後資金2千万円”は将来の目安として定着した印象もありますね。
ただし『2千万円あるから安心』という発想は危険!
私は社会福祉士として高齢者の生活相談も経験しており、老後生活でお金で苦しんでいる人を多く見てきました。
最近になって増えているのが、一定額の資産を用意していたのに生活難に陥るケースです。
この理由とし多いのは、『自分が想像していたよりも長生きしている(長生きしそう)』といったもの・・
今回は将来を考える上で大切な“長生きリスク”について書いていきます。
長生きで困窮?2千万円でも生活費が足りなくなる理由
普通に考えれば、老後資金として2千万円を用意しておけば充分。
しかし、実際には準備していても生活難に陥るケースがあるります。
この理由の多くは、寿命年齢の読み違いです。
例えば私は30代~50代の人に『老後のマネープランは95歳で考えましょう』と提案していますが、多くの人は年齢に関してギャップを感じます。
『95歳・・?せいぜい85歳では・・』
『私は早死にの家系なので、もっと短くても・・』
このような反応も少なくありません。
ただし私の経験から言えば、85歳で寿命がくることを想定するのは非常にハイリスクです。
途中で計画を変更すれば良いと考える人もいるのですが、取り崩し生活がはじまってからだとプラン変更は本当に大変・・
高齢になってからの予定変更が厳しい理由について、具体的な数字を使って説明していきます。
寿命想定を途中で10歳引上げたら困窮状態に・・
高齢になって年金だけで生活ができれば問題ありませんが、ほとんどの場合は足りないので資産を取り崩しながらの生活となります。
例えばですが、65歳で2400万の資産があるとします。
この場合に、寿命を85歳で設定すれば毎月10万円の取り崩しが可能。
さて、気になるのは最初は85歳で寿命を想定していて、75歳や80歳になってから寿命想定を95歳に伸ばした場合です。
その場合は、月10万への金額が以下のように変わります。
75歳で寿命を95歳に変更 | 80歳で寿命を95歳に変更 | |
毎月の引出し額 | 5万円 | 3.3万円 |
85歳で寿命を想定して毎月10万円を引き出していた人が、75歳になってから寿命を95歳にプラン変更すると毎月の引出し額は5万円(半分)になってしまいます。
『来月から給料が5万円減ります』と言われるようなもの・・
数字上は簡単ですが、5万円も減れば生活スタイルが大きく変えなくてはいけません。
現役世代でも生活スタイルの変更は難しいのに、75歳や80歳からだと相当に厳しいですね。
1~2万円を節約するのでも大変なストレスです。
ほとんどの人は、生活の切り替えできないのが現実・・。
資産の目減りしていく不安を感じながらの生活は、高齢になってからだと本当にツライと思います。
75歳や80歳からだと“仕事をするという選択肢がない”ので、大幅な節約(生活の楽しみを減らす)という方法になる可能性が大きいという事です。
ちなみに、今回の資産だと最初から95歳の寿命でマネープランを作っておけば、毎月の引出し額は6.7万円になります。
現役世代にとって老後をイメージするのは難しいと思いますが、自分が想像するよりも相当に長生きですので余裕を持った計画をオススメします。
関連:老後資金を平均寿命で計算するのは危険!FPが95歳までの計画を作る理由
老後生活で有効な金融商品は?
株式投資や投資信託は資産アップの期待は大きいのですが、リスクも高いので老後生活では思い切った買付はできない人が多いです。
何年かに1度の急落などは、誰も予想できませんからね。
その点を考えながら金融商品を探すと“債券”は注目です。
債券であれば購入時点で“満期日と金利が確定”しているので、資産の半分を買い付ける方法も可能。
例えば、現金2000万のうち1000万円を債券にするといった方法ですね。
私は米国債やドル建て債を約2000万円保有していますが、年間で約40万円の金利収入があります。
ドル建ての外国債券なんで為替変動の影響はありますが、ドルベースで考えれば基本的に元本が戻ってくるのが魅力。
※米国が破綻すれば、米国債でも影響はありますが可能性は非常に小さい
外貨建ての定期預金に近いイメージですので、投資初心者でも取り組みやすい商品です。
興味がある人は利用してみてください。
老後は資産寿命を延ばすことも大切です。
今回は『甘い想定が老後を破綻させる!2千万円あっても生活難になる理由』について書きました。
老後資金2千万円という金額を考えるのは賛成ですが、重要なのは取り崩しの計画です。
ザックリですが男性なら90歳、女性なら95歳くらいを目安にすると余裕があるプランができると思います。
『お金は墓場まで持って行くことはできない』という考えもあるのですが、私はお金を残すくらいでちょうどいいと考えています。
仮に80歳で亡くなってしまい資産がたくさん残ったとしても、お金の心配がなく生活ができたメリットの方が遥かに大きいですからね。
自分の寿命よりも資産寿命を長くするように準備しておけば、老後になっても笑顔で生活が送れると思います。
本文の途中で債券の説明をしましたが、老後は配当や金利を中心とした運用を並行していくのも資産寿命を延ばす有力な選択肢だと思います。
これらの商品については別ページにまとめていますので興味がある人は覗いてみてください。